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だんだんと、夜が深くなっていくのを感じました。
僕の気のせいでしょうが、空気は冴え、時間はゆっくりと遅くなり、謎の緊張感が徐々に芽生えていきます。
形容し難い不思議な気持ちになって、なんとなく、部屋の中から窓を見やると、ぱらぱらと雪が降っていました。
これは、重装備にならなくては。僕は心の中でため息をつき、視線を元に戻しました。
「やれやれ、雪が降ってますね。長谷川さん」
僕の隣で、長谷川さんは両手を膝の上に置いて、姿勢正しく正座をしていました。
後ろに結んだ髪に、丸眼鏡がとても似合うキリッとした表情。白いセーターにジーンズを履いており、少なくとも僕の家で嗅いだことのない、良い匂いがします。
「そうですね」
長谷川さんは、ちらりと僕を見て言いました。そしてすぐ、視線を戻してしまいます。
「……」
会話がすぐに終わり、部屋に沈黙の帳が下りました。
帳を壊すべく、僕はまた喋ります。
「あぁ、そういえば来月はベルギーへ旅行に行くそうですが、準備は万全ですか?」
「万全です」
「僕は付いて行ってはだめですか?」
「だめです」
「……あ、そういえば長谷川さん、最近は運動熱心ですね。ファッション雑誌も読んだり、発声練習もしたり、趣味が多くて羨ましいです」
「あなたが無趣味なだけです。気にしないでください」
「……今年はクリスマスが楽しかったですね。特にはしゃいだりしませんでしたが、静かに過ごせたクリスマスは新鮮でした」
「私は楽しくありませんでした」
──長谷川さんの横で、僕は静かに落ち込みました。
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