白い私。

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「美白飲料?」  製薬会社に勤める友人が、久しぶりに連絡をよこした。何でも、新商品の効能を調査するにあたって、幾人かのモニターを募っているらしい。 「本来はメラニン生成の異常とか、火傷による色素沈着の治療のために開発した医薬品なんだよね。だから、『美白効果』を(うた)っちゃうと、マズいんだけど……」  つらつらと断り書きを読むように語る友人を、私は食い気味に遮る。 「でも実際に、白くなるんだ?」 「うん、効果は保証する。茶色の毛並みだったハツカネズミに投与したら、翌朝真っ白だったからね」  地黒な肌は、子どもの頃からのコンプレックスだった。 「ゴボウ」 「石炭」 「かりんとう」  ガリガリに痩せた体型と合わせて、散々な呼び方をされてきた。おまけに名前が『雪子』だったものだから、『黒雪姫』と揶揄された思い出が頭を(よぎ)る。 「やる。試飲モニターになる!」 「いいの? 本当に!? でも、人体へのテストは初めてだから、思わぬ副作用が出るかも……」 「平気。私、体力にも健康にも自信あるから。ちょっとやそっとの副作用なんて、影響ないよ」 「そぉ? 助かる。じゃあ、一週間分、7本1セットを取り急ぎ送るわ」
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