白い私。

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 翌日、美白ドリンクは速達で届けられた。 琥珀色の小ぶりな瓶は、ありふれた栄養ドリンクにも見える。 「『1日1瓶、就寝前にお飲みください』……まどろっこしいなぁ。こんな少量で、本当に効くの?」  効果に自信はあると、友人は言ったけれど。 「でも、白くなったのは、小さなネズミよね……」  電話で話を受けた時のテンションは徐々に下降し始める。半信半疑のまま、ひとまず1瓶を飲み干した。  ピコペンペン、と携帯電話が間抜けな音を奏でる。母からの着信だった。 「あ、雪子ちゃん? お母さんです」 「うん、分かってる。何?」  名前が表示されるにも関わらず、母は必ず「お母さんです」と名乗る。 「明日だからね、お姉ちゃんの撮影」 「あぁ……」  2歳違いの姉が、1ヶ月後に結婚する。 ウェディングドレスと白無垢姿の前撮りに、妹の私も参加してほしいと打診されているのだけれど……。 「完全に比較対象だよね」  姉の肌は私と真逆で、透き通るように白い。 引き立て役として、妹を晒し者にする気なのだ。 「そんなこと言わないの。2人きりの姉妹でしょう」 それにね、と母は続ける。 「主役は花嫁なんだから、引き立て役を買ってでるくらいにならなきゃ!」  慣用句ではない。  本当に頭の中で、カチンと音が響いた。 「分かった。引き受けるよ」  気づいた時には、ドリンクの空瓶をボーリングピンに見立て、いくつも指先で倒していた。  7本を、一気に飲み干したのだ。 「どうせ、効きやしないって……」 ━━白雪姫の隣で、ゴボウが引き立て役を演じてやる。  アルコールを合わせ飲んだ勢いで、その夜は眠りについた。  翌朝。  目覚めたら、鏡の中の私は…… 「白い!」  1本も残らず、総白髪になっていた。 「そっち!?」 <了>
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