8人が本棚に入れています
本棚に追加
翌日、美白ドリンクは速達で届けられた。
琥珀色の小ぶりな瓶は、ありふれた栄養ドリンクにも見える。
「『1日1瓶、就寝前にお飲みください』……まどろっこしいなぁ。こんな少量で、本当に効くの?」
効果に自信はあると、友人は言ったけれど。
「でも、白くなったのは、小さなネズミよね……」
電話で話を受けた時のテンションは徐々に下降し始める。半信半疑のまま、ひとまず1瓶を飲み干した。
ピコペンペン、と携帯電話が間抜けな音を奏でる。母からの着信だった。
「あ、雪子ちゃん? お母さんです」
「うん、分かってる。何?」
名前が表示されるにも関わらず、母は必ず「お母さんです」と名乗る。
「明日だからね、お姉ちゃんの撮影」
「あぁ……」
2歳違いの姉が、1ヶ月後に結婚する。
ウェディングドレスと白無垢姿の前撮りに、妹の私も参加してほしいと打診されているのだけれど……。
「完全に比較対象だよね」
姉の肌は私と真逆で、透き通るように白い。
引き立て役として、妹を晒し者にする気なのだ。
「そんなこと言わないの。2人きりの姉妹でしょう」
それにね、と母は続ける。
「主役は花嫁なんだから、引き立て役を買ってでるくらいにならなきゃ!」
慣用句ではない。
本当に頭の中で、カチンと音が響いた。
「分かった。引き受けるよ」
気づいた時には、ドリンクの空瓶をボーリングピンに見立て、いくつも指先で倒していた。
7本を、一気に飲み干したのだ。
「どうせ、効きやしないって……」
━━白雪姫の隣で、ゴボウが引き立て役を演じてやる。
アルコールを合わせ飲んだ勢いで、その夜は眠りについた。
翌朝。
目覚めたら、鏡の中の私は……
「白い!」
1本も残らず、総白髪になっていた。
「そっち!?」
<了>
最初のコメントを投稿しよう!