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「あっ……」
思わず声が漏れてしまった。
「駄目だよ、声出したら。聞こえちゃうよ」
私に覆いかぶさりながら、まだあどけなさを残した青年は意地悪な笑みを浮かべ、さらに私を刺激した。
漏れてしまいそうになる声を堪えるために、自分の手の甲を噛む。
「耐えてる顔、色っぽいね」
垂れ下がる前髪が私の首元をくすぐるだけで、どうにかなってしまいそうだった。
放課後、君が初めて理科準備室にやって来た時のことはよく覚えている。
さらさらな栗色の髪と白い肌、そしてモスグリーンのダッフルコートがとても似合っていてかわいいと思った。
「わからないことがあって」
「君、何組?」
「C組です」
「ああ、高山先生のクラスね。今日高山先生、午後から出張なのよ。私で良ければ答えるけど」
「ちょうどよかった。先生に教えてもらいたかったんだ。高山先生の説明じゃどうせわからないから」
「そんなことないでしょう。高山先生、ベテランなんだから」
「あの人は頭が良すぎるんだ。自分はくどくど説明されなくてもわかっちゃうから、理解できないってことが理解できないんだよ。だから説明がへたくそなんだ」
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