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「もう帰りなさい。私は明日の授業の準備があるの」
「嫌だ」
「だめよ」
すると、君は両手で私の頬をそっと包み。
「僕が解放してあげるから」
解放という言葉に、想像以上に胸が締めつけられた。
今の状況は仕方がないことだと諦めていたが、自分が思っていた以上に心は限界寸前だったようだ。
呆然とする私に、君はそっとキスをした。
そのふんわりとした感触があまりに儚くて、今まで張りつめていた何かがぷつりと切れてしまった。
高山先生の身勝手なキスしか最近の記憶にはなかったからか、君のキスに涙が溢れてしまった。
そっと唇を離して見つめ合い、そして私たちは再び唇を重ねた。
君の首に腕を回し、角度を何度も変え求めあった。
深いキスの音が、無機質な物に囲まれた理科準備室に響いているのがなんとも淫らに思えた。
同じようなことを、ここで高山先生としていたのに。その時はそんなこと、なにも感じなかった。感じようともしなかった。
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