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初等部入学
クリスは今日十歳の誕生日を迎える。そして、明日はスウィフル魔法学園初等部へ入学する。この日、マリウスの勇者時代の仲間である賢者アノス、戦士ダグドラ、僧侶ミルベーレの三人が祝福に訪れていた。
「クリスっ! でっかくなったなぁおいっ!」
屋敷のチャイムが鳴り、マリウスとクリスが扉を開けるとダグドラが出会い頭にクリスを抱き上げた。
「ダグドラおじっさっ! 久しぶりっ!」
急に抱き上げられたクリスは言葉が上手く出なかった。
「いでっ!」
ゴンッと何か硬い物で殴られたダグドラがクリスを抱き上げたまま後ろを振り向くと、ミルベーレが杖の大きな宝石がついた部分で殴った後だった。
「やめなさいな。あなたはただでさえ筋肉ゴリラ。クリスはまだ子供なのですよ? ゴリラは檻に入ってバナナでも食べてなさいな」
ダグドラからクリスを取り上げるミルベーレ。
「クリスぅー! お久しぶりですねぇ!」
「ダグドラ、駄目だよ。彼女が一番クリスを溺愛してるって事を忘れてはね?」
頭を摩っているダグドラにそう言ったのは賢者アノスだった。既に妻子持ちのマリウス以外は、まだ結婚すらしていない。その中でミルベーレだけは少しクリスに対して何か拗らせている部分がある。
「ミルベーレさん、久しぶり……」
頬擦りしているミルベーレに困った表情で挨拶するクリス。その後ろから何かを嗅ぎ付けてやってきたジュリアとミルベーレの目が合った。
「あら、お久しぶりですね。ジュリア?」
「久しぶりね、ミルベーレ」
母であるジュリアが現れたにも関わらず、頬擦りを止める気配がないミルベーレ。
「そろそろ離してくれるかしら? クリスが〝苦しんで〟いるから」
「そうなのですか? クリス」
「えっ? えっ?」
とてつもなく悲しそうな表情をしているミルベーレにクリスは何も言えなかった。何より、クリスも幼いながらに男である故にミルベーレから香る甘い匂いと母にはない大人の女性に内心心臓が高鳴っていた。
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