初等部入学

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「ほら、問題ないじゃないですか。嫌ですね、母親なのに嫉妬なんて」  この二人、どうもウマが合わない。互いに何か意識している部分があるらしく、小さな所で小競り合いを幾度となく繰り返してきた。  因みに、マリウスがジュリアと結婚したからという訳ではなく、クリスが生まれてから突然ミルベーレが拗らせたのだ。 「将来、お姉さんと結婚してくれますか?」  クリスを抱きしめながらそう言ったミルベーレ。唐突な彼女の発言にジュリアは口角をひくひくと動かしながら声を出した。 「はあ!? 何を言っているの!? 相手はまだ年端もいかない子供ですよ!? 結婚というものがどういうものなのかよく分からない年齢の子供相手に何を約束させようとしているの!?」 「男性は十六歳で結婚出来ますからね。それに、彼は明日から〝私の〟学園に通う事になるわけですから」  スウィフル魔法学園は、ミルベーレが理事を務める 学園である。実はジュリアは別の魔法学園に入学させるつもりだったのだが、マリウスと繋がりのあるミルベーレが強くスウィフルを推したのだ。  入学金も授業料全て免除するという特別待遇。そして建ててから数年しか経っていないにも関わらず、学力から魔法から何から何まで頂点に君臨している有名校。子供の将来はほぼ約束されたと言っても過言ではない。  何より、ミルベーレは勇者と魔王が結婚した事を知っている数少ない人物であり、マリウスと旧知の中。断るに断れなかったのだ。 「クリス、明日から私の事はミルベーレ先生と呼ぶのですよ?」 「先生? あなたは理事でしょう? クリスと接点を持つ事はほぼない筈です」 「あら、私は別に書類仕事専門じゃないですよ? 子供達を導く者として教鞭をとる事立ってありますからね?」  これは大きな誤算だ。マリウスの手前断れなかったが、そんな事なら自分の行かせるつもりだった学園に入学させるべきだった、とジュリアは奥歯を噛み締めた。
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