50人が本棚に入れています
本棚に追加
そんな時、横で何やら笑っているダグドラにミルベーレが気が付いて彼を見た。
「何ですか?」
「いや、お前もう〝お姉さん〟って歳じゃねえだろう」
この瞬間、空気が一気に凍り付いた。アノスは深いため息をついて数歩下がり、ジュリアもクリスをミルベーレから引き剥がして抱き上げ離れた。
「へえ……。あなたは私にそんな事が言えるような立場にいるとでも思っていたんですか?」
「あ? え?」
冗談のつもりで言ったはずが、ミルベーレの怒りを買ってしまう結果となり杖で殴り散らされる結果となった。
「お、おおおおお……」
「相変わらず、お前はミルベーレの怒りを買うのが上手いな」
頭に幾つもの瘤を作り蹲っているダグドラを見ながらマリウスはため息をついた。四人で旅をしている時もこうやって彼女を怒らせる事が多々あった。
「俺より戦士向きだぜ……」
「何です? また殴られたいのですか?」
「み、ミルベーレさん! ミルベーレさんは綺麗だよ!」
ダグドラに向かってまた杖を振り上げたミルベーレに放たれた一言。その瞬間、死んだ魚のような眼をしていたミルベーレの表情がふにゃりと緩んだ。
「ふ、ふふふ。ダグドラ、今回はクリスに免じて許してあげまふ……」
先程までの顔も、僧侶としての凛々しさも全てが台無し。この時、ジュリアは彼がもう一つの才能を持っている事になんとなくだが気が付いた。それは、母としてはあまり嬉しくない才能だった。
最初のコメントを投稿しよう!