人には言えない秘密がある。

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「勿論約束するよ!」  息子から返ってきた返事は予想通りのものだった。ジュリア自身も、クリスが私利私欲の為に剣を使う事はないと勿論信用している。だが、約束という形を取らせる必要があった。 「じゃあ、剣を買ってあげます。ただし、父さんとではなく私と買いに行く事。いいですね?」  ジュリアはクリスからマリウスに顔を向けると「分かっていますね?」と目で言ってきた。彼がクリスと剣を買いに行こうものなら、どんなものを買ってくるか分かったものではないからだ。  勇者だった頃の伝手を色々と持っているマリウスが、どんな剣を息子に買い与えるのかが正直不安になってしまう。値段云々の話ではなく、何やら龍の首を切り落とした魔剣だとか一度振るえば山を真っ二つに両断するとか。 「分かったよ。そこは君に任せるさ」 「母さん、いつ一緒に買いに行ってくれるの!?」  目を輝かせるクリスにジュリアは苦笑いを浮かべた。こういう時期の子供は玩具などを欲しがると思っていたのだが、剣という物騒な物に目を輝かせるのだから困ったものである。 「そうね……。明日、買いに行きましょうか」 「嬉しいなぁ!」  これで自分だけの剣を手に入れる事が出来るとクリスは喜んだ。そんな彼の表情を見てしまうとジュリアもこれ以上は何も言えなくなってしまう。 (息子には甘いな)  マリウスに対しては恐妻家に近いものがあるジュリアだったが、クリスに対してはやはり甘くなってしまう。  以前、マリウスが屋敷に飾るように剣を彼女に内緒で買った事があった。しかし、ばれないはずもなく見つかった時の彼女の表情は今でも忘れられないという。 「あなた、明日はクリスと出掛けますからね。分かっているとは思うけれど、私がいないからと勝手な事はしないで下さいね」 「安心しろ。別に何もしないさ」 「セバス、この人の見張りは頼みましたよ?」 「お任せ下さい、奥様」  剣の一件からマリウスはジュリアに信用が全く無い。というのも、クリスが生まれてからそれをしてしまったのが問題なのだ。子供というのは不思議なもの親をしっかりと見ている。  例えば親が目の前で食べ物などの好き嫌いを見せるだけで、子供はそれを覚えてしまう。嫌いなものは食べなくても良いという考えに至ってしまう。  幼い時から隠し事を持つような子供には育って欲しくない、そんな思いが母ジュリアにはあった。
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