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無言で入ってくる謎の男たちは金子の部下なのだろうか。
倒れている男達の口をガムテープで塞ぎ、手足を拘束しながら高級な時計やアクセサリーをはずして金子に渡す。
品定めするように見てから鞄に入れていく。その間に血で汚れた床を綺麗に掃除した男たちは虫の息の連中をかついで運んでいった。
「失礼しました・・・」
金子は頭を下げて何事もなかったように出ていった。
「あいつら二度と太陽を拝めないな」
位置がズレたソファを直しながらシンが言った。
「エグい拷問だったな。いつもの事とはいえ寒気がする」
「あの人たちどうなるんですか?」
「まあ、死体になってお家に送られるんじゃないかな。バラバラで」
まだ血の匂いがするようで吐き気がする。
「拷問が趣味なんて変わってますね」
「趣味なだけならいいけどね」
桐崎がため息をつく。
女ひとりでもまわりのモノを使って上手く立ち回れば大柄の男でも倒せるんだなと感心した。
怖いのはなんの躊躇もない金子の精神状態だ。
「ヘタすれば俺たちがああなっていたんだから今回はラッキーだった」
「怖い人ですね金子さんて」
いやいや、というように桐崎が手をふる。
「まあ金子さんも怖いけど本当に怖いのは男たち」
立っているのがしんどくなって俺はソファに座った。
やっぱりこの世界は底なし沼だ。どこまで沈んでも足がつかない。
「3千万は金子さんの総取りに決まりだ。それなのに連中を追い込んでまだカネを引き出そうとする。強欲だねえ」
「じゃあ親父は」
桐崎は困ったような顔をして笑った。
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