深い底

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「閉店時間ごろに連絡して様子見てみようぜ。街中で事件起きそうじゃん」 「あは、桐崎さんもあいかわらずイジワルですね」  連れてきてもらった店はシンの元同僚が出したもので、入店したときからにぎやかに迎えられた。泉先輩はシンの紹介でここで働いているらしい。 自分から名乗る前から俺の名前が知れ渡っていて少したじろいだ。親父の事件のせいなのか、桐崎のそばにいるからか。もしくはその両方なのか。 「シンをよろしく面倒みてあげてね」 そう思うとまわりの良い対応が胡散臭くかんじる。 「うっせ。シャンパン入れる気が失せた」 ここに来るまでも視線は突き刺さっていた。その中には悪意を含んでいるものもあり、興味を抱いている感じもした。 「顔が名刺になればたいしたもんだよ」 頼んでもいないシャンパンが運ばれてきて、シンがぎりぎりと開けている。 「あいかわらずヘタだな」 「刺すぞ。何で俺が開けてんだよ」 悪態をつくほど仲がいいんだろう。こんな口が悪いシンを初めてみた。 「こうやって頼んでもいないお酒の料金を払えって言われたら腹が立つでしょ。でもこんなのザラで売上を上げたい奴が強引にやるんだ」 そういったトラブル解決が仕事と桐崎は言う。 ポン!と小気味よい音がした。 「キレイゴト言いたくないけど、信頼関係のある子にしか掛けは許さないのが基本だよ。で、そういう子は支払いは綺麗だ」 「そろそろ連絡入れるわ。さてどうなるかお楽しみに」 店が混んでくるまでゆっくりして店長の店に移動することになった。 「俺たちが来ても金にならないから不機嫌な顔してるぜ」 「ああもう来んな」 そう言いながらシンがにやにやしている。あまり見たことのないシンの姿だった。 歩いて移動しているとシンと桐崎は声をかけられる。俺は品定めされるような目で見られつつ、表面は愛想よく対応される。それがものすごく居心地が悪かった。
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