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某日23時頃、『エッジ』にて金川礼二(20,飲食業)が同じく飲食業の女性を暴行した罪で逮捕された。
テレビに礼二が連行される姿とテロップが映る。ネットニュースでも取り上げられ店長が頭を抱えていた。
「どうせならウチの『プラチナ』も連呼して宣伝してほしいわ」
マダムが開店前のエッジで店長のナリと話していた。
「俺の教育が甘かったか。申し訳ない」
「ああいう輩はどこに行っても問題起こすわよ。残った私たちが今後の対策に悩むだけ」
俺はいつも開店前に来て準備している。そのせいか何か起きると聞きたくない情報ばかり蓄積されてあまりいい気分はしない。
「キャバクラで売掛け作って飛んじゃったら回収するまで追い込むの常識よ」
「礼二が出てきたら捕まえて何とか・・・。あいつが借金してるの気が付かなかった俺が悪い。」
店長が外の異変に気がついて飛び出した時には遅かった。
女の子が血まみれで倒れていて、その隣に放心状態な礼二が立っていた。
現場を見ていた人が多すぎて内々に対処することが出来なくなり店長は警察に通報した。
女の子はマダムのキャバクラで働いていた売れないキャストで、成績をあげるためにツケでも文句は言わずに続けて、締日に自腹を切る。それも限界がきて礼二に直談判に来たら暴行を受けて病院に運ばれた。
「回収できるまであきらめない。出てきたら拉致してカネ作らせる。さてどんな方法でいこうかな・・・」
優しそうに見えるマダムが恐ろしい事をさらっと言う姿がこの世界の縮図な感じがした。同調している店長もこの世界の住人なんだなと改めて思う。
人は見かけによらない。言葉は知っていても肌で体感すると意味が重い。
「できれば新堂にまかせたくないけど。マダムは300万あきらめてない?俺が建て替えて自分で礼二を捕まえるよ。未来ある子の人生壊したくない」
「未来なんてない。奴はここで終わりよ。この世界カネが全て。命より大切なものだって教えるほうが親切。ナリも情は捨てたほうがいいわ」
マダムの言葉は冗談ではない。本気だ。
エレベーターまで送って戻ってきた店長の顔色は悪い。
「大丈夫ですか?」
店長に冷たいお茶を出しながら声をかけてみた。それを一気に飲み干したタイミングでシンが入ってきた。
「マダムが出ていったの見たけど、もう話はついた?」
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