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でも踊りを合わせてルシアンだってフレデリックにひけをとらないテクニックがあると私は知った。
それでもフレデリックに圧倒的な華がある事に変わりはないのだけど。
「本当なんでしょうか」
「うーん。
僕はルーカスが彼の為にそこまでするとは思えないなー」
「なんでよ」
「ルーカスは昔、女癖の悪さで有名でね。
同時に何人も彼女がいたらしくてルシアンの母親はその内の一人だった」
その女性はルシアンを産んで結婚を迫ったが相手にしてもらえないどころか捨てられそうになり、
自動車でルーカスと無理心中を図ったらしい。
結果的に相手だけが亡くなりルーカスは命に別状はなかったが脚に軽い障害が残り氷の上に立つ事はなくなった。
「ルーカスは生まれたばかりのルシアンを引き取ったけど、
自分を殺そうとした女の息子を愛せなくてずっと冷たくしているってさ」
「そんな事が…」
ルシアンの軽薄な仮面の下には複雑な感情が渦巻いているのかもしれない。
「それより!」
ドリスがテーブルに身を乗り出してきた。
「あんたは本当に何も知らないの?」
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