不穏

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とにかく事態は前進した。 本人の記憶はまだ戻らないがとりあえず一安心というものだ。 「あの人に会いたい?」 俺に安堵の表情が浮かんだのをどう勘違いしたのか麗奈が少し睨んできた。 「馬鹿」 笑って身体を引き寄せると素直に凭れかかって来る。 柔らかい髪を撫で顔を上向かせてキスした。 気持ちが通じていればいくら焼き餅やかれてもじゃれ合いに変わるのに。 あの日この部屋で約束した事。 彼女の心を勝手に忖度しない。 子供扱いばかりしない、 そして俺自身も大人ぶらない。 年の差を意識し過ぎていつの間にか壁を作っていたことに気づかなかった。 それが麗奈を傷つけていたのも。 「…ごめんね」 何故か少し怒ったような顔で麗奈が謝る。 「いや、 嫉妬してくれて嬉しいよ」 そう言って両手で包むようにその顔に触れると白い頬が薄紅色に染まった。
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