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「そういえば」
今度はこちらが気を揉む番だ。
「あれから何か言ってきたか?」
突然プロポーズしてきたというルーカス氏。
尋ねると麗奈は首を振る。
「特に何も言わないけど」
「けど?」
「気がついたらいつもこっちを見てる…」
睨みつけるでもなく悲しそうにするのでもなくただ見つめてくる。
そうした相手の気持ちはわからなくもない。
よっぽど軽薄な人物でなければ相当な決意で申し込んだはず、
断られたものの諦められないのだろう。
「少し怖い…」
「大丈夫だ」
立場も分別もある人間がおかしな真似をするとは思えないが彼女が不安がっているなら俺が話をするべきだろう。
「お前を渡したりしないから」
「絶対に?」
答える代わりにその唇をふさぐ。
そうだ、
絶対誰にも渡さない。
たった一人の大切な人を。
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