取引先のあの人

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「あっ……」 振り向く間もなく、指が入ってくる。 先ほど史人自身が放ったものが指に付着していたせいか、挿入はスムーズだった。 「あ、んっ!」 探るような手つきがもどかしくて、史人は、泉の指にそっと手を添え、よい角度に当たるよう、誘導した。 「ここ、突いて……っ」 要望に沿うようにして、指先が動いた。 要領を掴むのが早いのか、史人のいいところをずぶりと刺激してくる。 「あー、あっ……!」 半ば叫ぶように、史人は洗面台に突っ伏した。 足に力が入らず、体をぐにゃりと曲げながら、ただその快感に身を委ねる。 「だめ、あ……っ、だめっ」 続けてほしいのか、やめてほしいのか——それは史人にももうわからなかった。 「あぁっ、あ……っ、ああ!」 迫り来る絶頂に危機感を覚え、顔を上げる。 鏡越しに見た泉は、いつもの泉ではない、まったくの別人のようにも見えた。 「いれて、お願い……っ」 半ば懇願するように言った。 「これはに入らないの?」 「はいら、ない……」 早くいれて。お願い。 思わず口走ると———指を引き抜かれ、腰を掴まれた。 ゆっくりと、入ってくる。 粘膜を押し広げるようにして、泉の熱いそれが—— 「あぁ……」   史人は後ろに手をのばして、結合部をたしかめた。 入ってる。 泉のものが、たしかに、自分のここに—— 「はぁ、あっ」 呼吸を整えてから、泉が動き出した。 背後から抱きかかえられ、胸の突起を刺激されて、史人は思わず首を振った。 「あ、や……っ、すご、いっ」 耳に熱い息が差し込まれる。 「かわいいね」 囁かれ、ますます激しく突かれた。 「きもち、い……っ、や、すご、いっ」 叫びながら、鏡を見る。 泉が快感に顔を歪ませながら、自分を攻めている。 鏡に映し出された淫らな光景に、史人は背筋が震えた。 肉のぶつかる音と、吐息。 鏡が曇りそうなほどの熱気で、もう限界が近づいていた。 「い、く……いきそ……泉さんっ」 その声に刺激されたのか、泉が目を閉じて、ラストスパートをかけた。 「あ、はや、い……ああっ」 「設楽君……、俺も——」 最後は、声にならない叫びを上げて、洗面台に突っ伏しながら果てた。
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