取引先のあの人

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足を抱えられ、焦燥がつのる。 「泉さん、待って……」 史人の声など聞こえていないかのように、泉は体を進めてきた。 「う、ぁ……っ」 まだ充分にほぐされていないうえに、唾液だけでは潤滑が足りない。 粘膜が引きつるような痛みに、史人は顔をしかめた。 息を吐いて力を抜こうとするものの、痛みでそれもままなるず、目尻に涙さえ溜まってくる。 「いっ……た、う……」 それに気づいた泉が涙を指ですくった。 「ごめん。史人。ごめんね……」 萎えかけていた前に手を添えて、扱いてくれる。 しかし泉も、我慢ができないのだろう。 早々に腰を揺らし始めた。 「ん、ぁ! あぁ……っ」 前に与えられた新たな快感は、まるで痛み止めだ。 苦痛が、快楽に上書きされていくようだった。 「ん、ああ!」 会議室の、絨毯がひかれたフロアに、肩甲骨がめり込む。 泉の動きは激しくて、息も荒くて——だいぶ興奮しているのがわかった。 「あ、あぁ、はぁっ」 上品な顔して、意外と大胆だ。 自分の会社の会議室で、半ば強引にこんなことをするだなんて。 社会的追放と紙一重じゃないか。 泉の腕にしがみつきながら、自らも腰を揺らす。 「あ、ん!そこ……っ」 泉は体を前に倒して、史人を抱きしめるように、深く、激しく追い込んだ。 「あっ、あぁっ! い——」 いく。 その単語も言い切らぬうちに、史人は頭の中が真っ白になった。
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