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追うようにして果てた泉は、史人をそのまま抱きしめながら倒れ込んできて、呼吸を整えている。
史人はその背中に手を回すこともなく、腕時計に目をやった。
もう昼だ。
12時を回ると、贔屓にしている定食屋が混む。
「もう、いいでしょ」
そっと、泉の胸を押す。
体を離すと、泉の放ったものが臀部を伝った。
「ごめん。史人……」
「謝らないでいいですよ。泉さんのカラダ好きなんで。二度楽しめてよかったです」
ネクタイを直し、身支度をする。
泉はうろたえながら見ていたが、史人が全てを終えて立ち上がると、慌てたように抱き留めてきた。
「カラダだけなの……?」
泣きそうな目で見つめてくる。
史人は、泉の唇を指でゆっくりとなぞった。
「カラダだけです」
留めに、にっこりと笑う。
泉の腕の力が抜けたのがわかった。
史人はそっと顔を近づけ、耳打ちをした。
「おいしかったですよ、泉さん」
鞄を手に取り、ドアを開ける。
そして、泉のほうは振り返らずに、
「ごちそうさまでした」
別れの挨拶代わりに言ってから——扉を閉めた。
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