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俺の親たるオメガは、郷よりも精霊よりも、己が番をアルファに立たせることを優先した。
オメガとして、いや人狼として誤ったことをしたのだ。ガンマに嫌われるのも当然。オメガもアルファも、すべての精霊に受け容れられなかったから、じゅうぶんな恵みを受けることができない。なのに、あのオメガがあそこまで生き永らえたのはなぜか。
苔に宿る精霊たちは、郷の滅びを望まなかった。オメガのいない郷は荒れて滅びる。だからガンマを介して、あのオメガに力を貸し続けていたのだ。
それに加えて、親は上手かったらしい。やはり賢かったのだろう。
生気を薄め精霊を感じ取り、雑多にもたらされる中から必要なものを選び取り、人狼に必要なことを教えて精霊の喜ぶよう郷を導く。それが上手なオメガは精霊に好かれる。好かれれば助けてもらえる。
そうでなければ、いかにガンマが手助けしたとしても、すぐに失われていただろう。
すべからく、命は喰らわれ他者の糧となる。
より強きものが弱きものを喰らい、さらに強きものに喰らわれる。最も強きものであっても、やがて魂は失われ、骸は大地の精霊たちが喰らって還元される。
どんな小さなものでも自ら命を差し出したりはしない。抗い逃れようとするけれど、強き者はそこに哀れなど感じず、喰らい尽くそうとする。しかし弱きものが食らいつくされて滅びれば、森は荒れる。
すべての生き物がいることで、森は健やかに保たれるのだ。
強いものは喰らいすぎないように。
弱きものも己のつとめを忘れぬように。
風や水や光、それらも森を健やかに保つためのつとめをおろそかにせぬように。
人狼は精霊たちの営みを促し、森の秩序を保つために在るのだ。
精霊たちを気持ち良くさせて良い結果を得られるように促すのがオメガ。
秩序を保つよう獣たちを導くのが人狼たち。
森を保つため繁りすぎた枝を落とし、繁茂の過ぎる下生えを間引きして、風通し良く保つ。水の道を遮る倒木があれば排除し、毒があれば除き、増えすぎた獣を狩って森の秩序を保つ。しかし、それぞれの務めを全うするなかで、人狼同士ぶつかり合うことはある。郷の掟に従わず、秩序を破るものもいる。
だからアルファが存在する。
アルファは人狼を従わせる力を宿し、秩序を保つものだ。
森を治めるものとしての務めを果たす為に人狼たちを動かす。オメガとアルファは精霊から知らされることから郷を保つに必要なことを知る。人狼たちは森を健全に保つよう務めを全うする。
俺は選んだ我が番を、素晴らしいアルファに導かねばならない。
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