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知らず伸ばした指が、滑る。
紅潮する頬に、美しい鼻先に、愛らしい唇に、白く艶めかしい首に……。指先からじんじんと伝わる艶熱。
瞬時目を合わせた我が番は、すぐに恥じらうように目を伏せる。その手が薄物を捲り上げていく。
露わになる滑らかな腹。筋肉の陰影を目で追うと、雪灰のけぶる股間に、雄のものがそそり立っている。先端を濡らせた震えるそれに、自ら触れて顎を上げ、甘い息を漏らす。
ゴクリと、喉が鳴った。
眼はもう一方の白い手がその奥に伸び、指が蠢くのを追ってしまう。
「あ……」
悩ましい吐息。僅かに開いたくちもとから白い歯と赤桃色の舌が覗き、蒼瞳が悩ましげに細まる。
滾る情欲に、喉奥から低い唸りが漏れる。
「……なにを」
している。
なんと、悩ましい、ことを。
「は、ぁ……、できる……もう」
蠢く指から、ぴちゃり、と滴る音。僅かに寄せた眉の下、瞼が落ちる。
俺の雄は猛りきり、動く度に葉の鳴るカサリカサリという音が、やけに耳に響く。
「……っ、ぁ……」
少し顎を上げ、一度閉じた瞼が僅かに開く。潤んだ蒼が、俺を捉え────
濃密な気配に包まれる。
オメガと自分は特別な絆で繋がっている。強烈な一体感。二匹で一つなのだという実感と共に腰紐を緩める指が、激しい歓喜に震える。自らを叱咤しながら下衣を下ろす。
「ここに、入れて、早く」
さらなる歓喜が身の内に沸き立ち、息を整えようと努力しても、はあはあと荒ぶったまま落ち着かない。
「あんたの……子種……」
ぶわっと吹き出すかのような、発情の匂いが、身を包みこむ。
ひどく濃密な、匂い、気配────
鼻は蒼の雪灰の発情以外嗅ぎ取れない。耳も煽情的な息遣いと声以外拾おうとしない。目に映るのは美しい蒼の雪灰のみ。
森の奥、枯れ葉を寝床として横たわり、共に夢中になって互いを味わおうと。
不安はない。
強者の匂いを纏う俺たちに近寄る獣など、いるわけが無いのだ。
蒼の雪灰の首元を噛み、甘露を味わって身の内に漲るものを感知した。それから変わっている。俺と、蒼の雪灰、互いの気配がより強者のそれへと変わっている。
交尾をするのは初めてだが、なにをどうすべきか分かる。どうすれば子種を活かすことができるか、本能が命じている。その通りにすれば事は成される。
しかし甘い匂いに誘われ、本能が命じないこともしてしまう。
人狼らしく筋肉の発達した両足を持ち上げ、その太ももに鼻をすり寄せた。肌は今まで感知したことのない特別な匂いを漂わせている。
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