34.交接※

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 舌を出してペロリとその肌を舐める。  ああ、なんという味わい。舌が歓喜し、喉が鳴る。太ももを甘噛みし、えもいわれぬ幸福感に包まれながら、甘い発情の香りをまき散らす蜜壺へ、そそり立つ雄を押し当てる。 「んっ……」  蒼の雪灰が両腕を上げ、俺を誘う。抗わず身を寄せた。濃密な匂いに煽られるまま、先ほど甘露を味わった噛み痕に舌を這わせる。牙の痕は塞がって、もう甘露……血は流れていない。 「あっ……ふぅ……」  あえかな声が耳に響く。  紅潮したその肌は、肌から昇り立つ甘い香りは、俺を滾らせ、本能の声を響かせる。  命じるまま腰を進める。火を吹きそうなほど熱を持ったものが、肉の狭間に入り込んでいく。狭いそこはとても熱く、蜜に塗れて濡れた音を立てつつ俺を締め付ける。  「んっ」  眉を寄せた蒼の雪灰に怖れを覚え、本能の声をねじ伏せて腰の動きを止める。  はぁ、はぁ、愛しい番の息は甘い。全てが甘い。塗れた密壺も、おそらく甘いのだろう。 「……くっ」  そんなことばかりが脳を走る。動きを止めているのがひどく辛い。しかし、なにがあっても、俺は番を傷つけない。 「痛むのか」 「うん……」  汗の滲んだ額を、こめかみを、ぺろぺろと舐める。汗も甘い。白い手が両頬を挟み、持ち上げる。鼻先が愛しげに擦りつけられる。俺も擦り、思う存分、番の匂いをこの身に染みこませる。 「ゆっくりやろう。無理せずに」 「うん。でも……」  鼻を擦り続けながら、愛しい番は、はあ、と息を、熱の籠もった息を、漏らす。 「……早く、欲しい」  この。  愛しい生き物は……なんという誘惑をするのか。 「分かっている」  しかし俺は、幼い頃からずっと見ていたのだ。成長を見守り、触れたい匂いたいという欲望を押し殺し続けてきたのだ。  全ては、傷つけることを恐れたがゆえに。 「俺も、同じだ」  そして今、とうとうこの腕にかき抱くことができた。思う存分匂い、舐めることができた。この歓びに勝るものなど無い。この期に及んで愛しい者を傷つけるなど、今までの努力を無にするものだ。  ゆえに。  俺も早く押し込んでしまいたいと、内からの欲望の声が叫び、早く子種を植え付けたいと、仔を成さねばならぬと、本能の命じる声が脳に鳴り響くのを甘受しつつ、耐えている。 「……我慢してる?」 「ああ、そうだ」 「しないで」 「しかし、痛むのだろう」 「いい」  汗を滲ませ、番は言った。 「必要なこと、だから」  笑みを浮かべたその(かんばせ)は、内なる光を発したように輝いて、俺を魅了する。 「来て。ぶち込んで。俺の中に」  身の内が燃え上がった、ような気がしたその瞬間。  克己心ははじけ飛び、身体が動いていた。
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