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「ぅぁああっ……ぅく……」
一気に最奥まで突き込んでしまったと自覚したときには、蒼の雪灰が歯を食いしばるようにして、俺の背を掴んでいた。
「す……まん」
歯を食いしばって己を律し、動きを止める。
押し込んだ場所はひどく心地良い。
いや、心地良いというのは湖での水浴びとか、満月の夜の遠吠えとかであって、今覚えている感覚とはまったく違う。背筋をゾクゾクさせる、これは今まで感じたことの無いもの。
克己心をすりつぶし、腰が、身体が、勝手に動こうとするのを助けようとするもの。
蒼の雪灰の目は潤みきり、涙が溢れている。はぁはぁと胸を大きく喘がせ、しがみつく指が震えているようだ。いかん、我が事よりも番だ。
「すまん。痛いのだな」
目尻に残る涙を舐める。
ああ、涙ですら甘露だなどと、これだけでまた背筋が疼き、動けば良いのだと本能が命じる。しかし番が痛みで涙ぐんでいる。
いったいどうしろというのだ。頭が過熱していく。
「ちがう……」
微かに震える声。
はあっと息を吐き、しがみつく腕を宥めるように撫でながら鼻を擦りつけた。いいのだ、これだけでも、今まで望んで得られなかった事なのだから。
「違わない。泣いているではないか」
というか、すでに根元まで埋め込んでしまっているが。このままじっとしていても子種は出るのだろうか……。
「違う、違うんだ」
変わらず潤みきった美しい蒼の瞳が、まっすぐに俺を見て微笑んだ。
「……あんたと、一緒になれたんだって……それだけで」
言ってるそばから、目尻に涙が溜まる。
「……嬉しいんだよ」
ぐるるる、と。
喉奥から唸りが漏れる。
「ねえ……アウルム・アイス……早く……」
克己心は弾け飛んだ。
「……っ、馬鹿者が……っ!」
怒鳴りつけながら、本能に身を委ねる。
「ああっ、……んっ、アウル……ム・アイ、ス……うれし……っ」
涙を流し、甘い声を上げる、我が番。
抗いがたい悦楽に包まれ、本能が、内なる声が、歓声を上げる。これで良いのだ。これが正しいのだ。促されるまま動けば良いのだ。
打ち付ける腰。肉の打ち合う音。番が声を上げ、涙をこぼし、しがみついてくる。それをかき抱き、鼻を擦り合わせ、荒い息を交歓し……
蜜を纏った肉の狭間に突き込むものは、今にも弾けそうに昂ぶる。
「あっ、あぁっ、アウルム……アイ、スッ……ああっ」
「う、くっ……!」
奥まで突き込んだ。そのまま動かない。動かずとも、どくんどくんと脈打つものが番の内奥を責め続けている。その都度甘い締め付けを返すから、それが分かる。
「ああっ、く、来る……っ」
顎を上げ、絶え入るような声を上げて、俺にしがみつく手に力がこもる。愛しい。愛しい。誰にも傷つけさせない。この身体を、この身の内に宿る命を…………この、郷を────
番と共に、感じ取る。森の全てを感知する。
眠る準備を整えた栗鼠から、巨大な熊や鹿の王まで、獣たち全て。
草や木や、虫や鳥や、漂う全ての小さな生き物たち。
郷の人狼、老いた者から幼狼まで全て。……そして精霊たち。
「……うっ……」
「く…ぅ……はぁぁ……っ」
そしてなにより強く、番を感じる。
共に高みへ駆け上る。この一体感。この歓び。
何物にも代えがたい──────
Wow oh oh oh oh oh oh……ohn
森に、二匹の遠吠えが響く。
それは、郷の人狼のみならず、森の全ての生き物の耳に届き……
新たな支配者の誕生を、森の全てが肯った。
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