個室での水音

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 口の中は、彼自身でイッパイに埋め尽くされている。 体積も硬度も、舌とは格段の違いだった。 鼻の奥を突き刺さすような息苦しさまでもが気持ちいい。 ――そう感じてしまう自分が、自分でもどうかと思う。 痛いのはさすがにムリだが、苦しいのはけして嫌じゃない。  夢中で舌を使っている内に、堪らなくなってきた。 おれの指先はスラックスの前立て、ファスナー、ボクサーブリーフを次つぎとくぐり抜けて、ようやく自分自身へとたどり着いた。 今まさに、口の中にある八広自身と同じくらい硬く、――そして濡れていた。 彼のは舌で、自分のは指で、どちらも先端に円を描くようにこねくり回す。 「ふ、ふうぅっっ・・・・・・あっ!・・・・・・あぁっっ‼」 今まで抑えにおさえて、かみ殺してきただろう八広の声が聞こえてくる。 それを追い掛けるような、再びトイレの水を流す音――。  使ってもいないのにどうしてだろう?と、一瞬だけ思ったがすぐに分かった。 音を、消しているのだ。 思わず漏れ出る自分の喘ぎ声と、おれが口で舌で生み出している音とを。  そう考えると、燃えた。 俄然、ヤる気が出てきた。  八広の尻の下で流れる水音に張り合うつもりで、口を舌を用いる。 圧を加えるために口をすぼめて吸い上げると、 「くっっ‼」 と、短い悲鳴が上がった。
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