205人が本棚に入れています
本棚に追加
/108ページ
掴まれた手がもの凄い力で、勢いよく引っ張られる。
体が顔が、さらに彼と近くになった。
彼の目の中に映り込むどころか、鼻先が、まつ毛までもが触れ合いそうになった。
手は、彼の分身へと誘導された。
既に彼自身の手で、露わにされ高められていたのだろう。
それは上を向き、透明な先走りをこぼしていた。
触れた瞬間、ヤケドしそうだと錯覚するほどに熱かった。
その熱さに負けず劣らず熱っぽい声で、八広はささやいてくる。
「さっきのでガマン出来なくなりました。続き、してくれませんか?」
それは『お願い』の皮を薄く一枚被っているだけの強制、――強要だった。
猛り狂うそれをおれの手に押し付けたままで、彼はおれの下唇をなぞる。
そうしながら返事を、答えを急かしてくる。
「あっ」
たったの一音だけだったが、声を抑えることが出来なかった。
声だけではなく、熱いため息も一緒に漏れ出てしまった。
何時もは、おれの体の奥底で眠り続けている『ネコ』の発情を促すのは、決まって唇への刺激だった。
キスはもちろんのこと、指先で触れられるだけでも弱かった。
――さすがに、歯科治療の際には催さなかった。
どうやら、あのピッタリとしたゴム手袋に興奮するほどのヘンタイではないらしい。
最初のコメントを投稿しよう!