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個室での水音
八広とのキスの間中ずうっと、さっきまでの経緯を反すうして気を紛らわせようとしていた。
――無駄な努力だった。
感じやすい口の中を縦横無尽に、それこそ我が物顔で動き回られて、おれの足腰の力はカンペキに抜けた。
ズルズルとその場に座り込む。
トイレの床=汚いという考えは、その時にはまるで思い浮かばなかった。
目の前には、おれの手に覆われてる八広の分身があった。
「磐田さん――」
八広が、おれを呼ぶ。
一応、名字を敬称、――さん付けで言うのだけでもマシだと思った。
おれの手を上から押さえ付けるのを、彼は止めた。
その代わりにアノ目で、おれの顔を目を見下ろして促してくる。
目は口程に物を言うとは、本当のことだなーとつくづく思う。
おれは手を退けた。
彼自身の先端が、テロテロとヨダレを垂らしているのを文字通りに目の当たりにして、おれもまた口の中に唾液が溜まるのを感じた。
――まんま、反射神経だった。
ゴクリと喉が鳴った。
一瞬だけ彼を、彼の目を見上げる。
その後で、顔を口元を彼自身へと寄せる。
大きく息を吐き出してから、一気に咥えた。
後は、おれにとってはラクな――、いつものことだった。
口内の側壁へと左へ右へ、強く弱く思う存分に撫で擦り付ける。
八広の呻き声が頭の上へと降ってきたが、おれは、おれ自身の快感を追うのにただただ必死だった。
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