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真実を知り奇跡がおこる
圭が家に帰ると母さんが仕事から帰って来ていて夕食を作っていた
ただいま
お帰り。今日ねスーパーで牛ステーキが安かったからこれから焼くね
おー、ご馳走じゃん
夕食を食べながら
母さん、今日さ女の子から手編みのマフラーもらったんだ
ちょっと驚いたように
あ、そう
その子、ちょっとカッコいい子なんだよ
へー。でも圭はマフラー苦手じゃなかった?
そうなんだよ
だからさ、その子に事情を話してカバンの持ち手に縛る形でもいいか聞いて来たんだ
そう
でも事情ってどんなふうに話したの?
だから、生まれてくる時に首にへその緒が二重に巻いていたからだと思うけどマフラーが巻けないんだって、母さん言ってたから
うん、そうよ
そう言ったそばから、母さんの様子がおかしい
涙が流れた、の、か?
母さん、どうしたの?
圭に話さないといけないことがあるの
圭がへその緒が首に巻きついていたのは本当のことよ
でもマフラー巻けないの
多分、そのせいじゃないと思う
お母さんね、圭が1歳になるかならないかの頃急にお父さんが亡くなって一人で圭を育てていけるか不安になってて
ある晩、気がついたら寝ている圭の首を絞めてたの
圭が小さな身体で全力で泣いたからお母さん、我にかえったの
圭が死にたくないよーって言ってると思った
それから圭を抱いて一晩中泣いて
何があっても一人で育てるって決めたの
それからはもう迷わなかった
公共機関に相談にいって受けられる補助とか教えてもらってね
そうだったんだ
母さんは僕がマフラー巻けないのを知ってずっと責任を感じてたんだね
わかった
今日限りでこの話はおしまいね
僕は母さんのお陰でこんなに元気に育ったんだからさ
圭は涙ぐむ母親にふざけるふりをして、後ろから抱きついた
前からだと泣いているのが見えてしまうから
二人は泣いてるのか笑っているのかわからないごちゃまぜの顔になってご飯を食べ始めた
後日、圭は中村さんに
僕さ、観たい映画があるから一緒に行ってくれない?
と、LINEをした
二人が待ち合わせた日はとても寒い日で
不思議にこの日から圭はマフラーを巻くことができるようになった
もちろん中村さんからもらったあのマフラーをしっかりと
温かいもんだね、マフラーって
圭は中村さんのことを初めてあかりちゃんと呼んで手を繋いで歩いて行くのだった
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