第二話「私が願ったコト」

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もう動かなくなって冷えきったおじいちゃんの身体を見つめながら、お父さんはポツリポツリとおじいちゃんの最期を話してくれた。   足の骨が折れていたらしい。……昨日の夜、ずっと痛い痛いって言ってたのは、そのせいだったのかなって、改めて思った。何度言ってもずっと同じ方向を向くから床擦れが出来たって、お母さんは困ったように言ってた。きっとそれだけでも痛いのに、そのうえ骨折だなんて……。 もし私が昨日、夕方まで寝てなかったら……ちゃんと起きて一階に降りて行ってたら、きっとおじいちゃんが勝手にベッド抜け出して歩いちゃったのも止められたよね。そしたら、こんな痛い思いさせる事なかったのかなぁ?歩かなかったら、ヒビが入ることもなかったよね?……私が、もっと優しくしてあげてたら良かった。おじいちゃんが、きっと一番辛かったのにね。ごめんね、おじいちゃん。気付いてあげられなくて、ごめん。 でも痛そうなのはほんとにそれだけで、検査の後ベッドに乗せたら……本当に、本当にあっけなく……何も言わずに、逝ってしまったんだって。苦しまずに逝けたんかなって……。おじいちゃんの表情は穏やかだったから、きっと苦しまずに逝けたんだと、思いたい。   お疲れ様、おじいちゃん。頑張ったね……ゆっくり休んでね。   言葉に出す力はなくて、ただ涙を拭いながら、何度もおじいちゃんに声を掛けた。 神様。もしもいるのなら……真っ直ぐに、おじいちゃんの魂を、家族の元へ誘ってあげて下さい。おじいちゃんを……おじいちゃんに酷い事を思ってしまった不甲斐ない孫からの、それが本気の願いです。     第二話・終
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