第三話「別れの準備」

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自宅に帰ってしばらくの間は、私も葬儀屋さんの話を真剣に聞いていた。だけど知らない単語が多すぎて、おまけに何だか……嫌な感じが、した。 お葬式のお金の話……おじいちゃんの命が散っても、この人には何も関係がない。そういうビジネス……仕方ないけど、何だか苦しい。 私は耐え切れなくなって、気が付いたら二階に逃げるようにして上っていた。廊下の陽のあたる場所に座って、部活の打ち上げの事を思い出した。あと一週間しかない……だけど、さすがに幹事を真っ当する気力はなかった。だから友達に連絡して幹事の引き継ぎをお願いした。これで、少しはお葬儀のことに集中出来る。   自分では、これでも落ち着いている方だと思った。数年前の私だったら、きっと泣くしか出来なかったと思う。お葬式の事なんか、考える余裕もないくらい泣きじゃくって……。でもきっと、その方が良かったんだと思う。素直に泣けた方が、きっとずっと楽だった。こんな罪悪感だらけの心、持たない方が幸せだった。おじいちゃんに心配かけたくないから、泣き虫な瑞樹はしばらくお休み……だけど、地味にポツポツと泣くよりも、いっそ一気にたくさん泣けた方が、心配かけないんじゃないかと、今更ながら思う。
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