第四話「割られた茶碗」

3/3
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
葬儀屋さんの指示のもと、私たちはおじいちゃんを棺に入れた。触れた身体はとても冷たくて、その足は私の腕と同じかそれよりも細くて、ポロポロと涙がこぼれた。 何度も何度も涙を拭っていると、ふと次男の姿が目にうつった。それで、やはり血は争えないのかと実感してしまう。……私も次男も、こういう時はやはり父の子だ。母と長男は何度も声を上げて泣いていたが、私と次男は泣いても声を押し殺している事の方が多かった。そしてなるべく……いつものように生活し、笑っていた。 だけどそれは、棺に入れる時には通用しなくて……相変わらず声は押し殺していたものの、母や長男と同様に泣いてしまった。   棺が車に積まれ、会場へと運ばれる。母以外は別の車で会場へ向かうため、母だけが車に乗り込んだ。   「ふ、え……ぇ……」   車が出発する瞬間、どうしてなのか分からないけど、我慢出来ないほどに泣いた。声を上げて、割られた祖父の茶碗を見つめながら、泣きじゃくった。 だがそれも長くは続かない。私たちは涙を拭い、荷物を持ち、車に乗り込んだ。会場に行って、色々と準備しなくてはいけないから。   おじいちゃんを、送ってあげなくちゃいけないから。     第四話・終
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!