第五話「再会」

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従兄の、H君だった。   「覚えとるかなぁ?昔ちっさい頃に……」   「え?この前おばあちゃんとこに来てたんは……違う、人?」   「……へ?お盆に?」   「た、ぶん……」   「それやったら俺やわ。あれ?」   「やったら会っとるよ。」   呆れたように笑う。そんな日常が、救いだった。おじいちゃんはみんなが笑っているのが好きだったから、笑顔で見送りたいと思った。だから、こうして嘆くばかりでなく普通に話せるのは救いだったんだ。   「叔父さんが話しとったで?毎週年下の彼氏が京都から来るんやて?」   「…………は?」   自分で言うのもなんだが、かなり間の抜けた声だったに違いない。私の脳内では、しばらく「叔父さんって誰だ」という疑問がグルグル回っていた。そもそも、年下の彼氏なんていない。 すぐに叔父さんとはうちのお父さんの事で、年下というのは勘違いだと気が付いた。一体いつそんな話をしたのかは謎だが――多分次男やT君たちと話していた時だと思う――とりあえず「毎週じゃないよ」とだけ否定しておいた。年下でないというのも、後で訂正しておけばいいだろう。 そういえば、昨日は大泣きしてくれたけど……アイツ、今日の免許の試験は大丈夫だったのだろうか。少し、心配。 だがそんな心配も、従兄との会話でかき消される。   「叔父さん、心配しとったで。」   ……うん、それは分かる。口にしないだけで、私が誰かと付き合うといつも不機嫌そうな表情をしているから。兄ちゃんたちは露骨に相手を嫌う――和解する気は考えにないらしい――し、お母さんは私を心配してなのか、認めてはくれても気に入ってくれるかは別だし。 少なくとも、今のところアイツは誰にも認められていなかった。せめて顔が良ければアレなのだが、普通だし。内面を分かってもらうには時間が必要だろう……。
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