第六話「思い出の渦」

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最初の思い出は、みんなでバイキングに行った時。あの時はおじいちゃんも一緒に外食に行けるくらい元気だった。何を食べたかなんてまったく覚えてないけど……みんな楽しそうで、わけも分からず私も笑っていた。 何年か前に、私はこう願っていた。   また家族六人みんなでバイキングに行きたい。   もう叶わない願いを、私は何年見続けたのだろう。思い出せないくらいの時間、ずっと願っていた。   食べ物関係の事は、たくさん覚えている。おじいちゃんは畑をやっていて、たくさんの野菜や果物を育てていた。おじいちゃんの作る野菜は、どこで売っている野菜よりも美味しかった。何度か私も、畑に着いて行っては手伝った事がある。それも小学生くらいの事だったけど、よく覚えてる。 スイカにトウモロコシ、それから柿。おじいちゃんの作る作物で一番好きだった3つの物だ。毎年、おじいちゃんのスイカを楽しみにしていた。いつからかスイカを作るのをやめた時、すごくがっかりしたものだ。 それからトウモロコシも、いつも黄色い綺麗なトウモロコシを採って来てくれた。たまに美味しくないのもあったけど、それでも好きだった。 柿は毎年木に実をつける。おじいちゃんに内緒で、枝を引っ張って一人で柿を採ろうとした事もあった。残念ながら、その時は身長も力も足りなくて採れなかったのだけど……。   冬になると、毎年伯母ちゃんがみかんを送って来てくれる。私はコタツに入ってみかんを食べるのが好きで、毎年それを楽しみにしていた。みかんの甘皮には栄養がたくさんある。だから、私はいつも甘皮を剥かずに食べているのだけど……なぜか昔から、おじいちゃんは私のみかんの甘皮を剥いてくれた。別に甘皮のないみかんも好きなのだけど、いつもそれが不思議でたまらなかった。 林檎を食べようとすれば、皮を剥いてくれた。そして手渡してくれる……のは良いのだけど、なぜかおじいちゃんは剥いた皮を食べていた。それが気になって、いつかそれを父に聞いた事がある。皮には栄養があると言っていた。……みかんの甘皮は剥くのに、林檎は皮を食べるなんて、不思議だ。 あの頃、私に包丁を持たせることが怖かったのか、林檎の皮を剥こうとするとなぜかおじいちゃんに包丁を奪われていたのを思い出す。皮剥き好きだったから、実は少しだけむぅっと膨れたこともあるんだよね。
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