第六話「思い出の渦」

6/7
前へ
/50ページ
次へ
おじいちゃんは、本当にお父さんと仲が悪かったよね。同族嫌悪、に見えたけど……違ったのかな? 私たちにはすごく甘いおじいちゃんだったけど、お父さんとはよく言い合ってたってお母さんから聞いたことがある。私から見ても、二人が笑い合ってた記憶なんてない。っていうか、一緒にうつってる写真すら見た記憶すらないんだけど……気のせい、かな? だけど……逝く前日、お父さんに言ったんだって聞いた。   「世話かけるなぁ。」   ……初めてだって、言ってた。私やお母さんや、他の人たちには感謝の言葉をよく言ってたけど、お父さんに感謝の言葉を言った事なんて、今までほんとになかったんだって。 良かったね、お父さん。最期にやっと通じ合えたみたいで、良かったよね。お父さんは泣いたりなんかしないけど、それでも辛いんだって分かる。私たちが泣いてしまうから泣けないんだっていうの、きっと私の間違いなんかじゃないと思うから。私だって……大切な人たちが泣くの、やだから。確かに「私が死んで泣いてくれる人はいるのかな」って言った事もあったけど……いざ泣かれたら、死んでも「ごめんなさい」って謝っちゃうよ。
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

8人が本棚に入れています
本棚に追加