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 世話を始めて一週間。  どうやら、こうして室内に入ってくると食べ物がもらえるということは覚えてくれたようだ。  近づくと口から涎がダラダラと垂れているのがわかる。  反射、といえば反射なのだが、学習といえば学習だ。  (………この身よりも獣に近いというのはいささか皮肉な話だな)  溜め息を吐きながら食事の準備ができたことを伝える。  すると、若はパクパクと口を動かした。  「?」  (『ご、は、ん』? この身の口の動きを真似たのか?)  しかし若の口から音が漏れることはない。  次第にその事実に焦れたのか、若は手で床を叩きだした。  口の動きに合わせて手を動かす。それに満足したように口角を上げた。
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