第1章:ホワイトアウト

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「その様子だと状況を把握出来てないね。 いくらホームレスでもラジオ放送くらい 聴けって言ったでしょう… 心配して来てみだけどやっぱり危なかった。 この小屋はもうじき倒壊するよ 雪の重みでね。」 寝ぼけ(まなこ)の俺を見たシンジさんは 呆れた口調でそう言った。 ホームレスになってから俺は世間の 話題なんか全く興味がなかったが シンジさんの話しでは数日前から 大雪警報が出ていたらしい。 彼の言った事は正しかった。 ブルーシートで(おお)われた俺の小屋は ギシギシと(きし)む音がして 天井の中央部分が垂れ落ちてきていた。 今にも小屋は倒壊しそうだった。 「百聞は一見に如かず、外を見てみなよ」 シンジさんにそう言われた俺は寝袋から 這い出るとブルーシート小屋の入口から 顔を出して外を見た瞬間に唖然(あぜん)とした。 雪が俺の腰ぐらいの高さまで積もっている! 猛吹雪で1m先が全く見えない… 見慣れた多摩川河川敷(たまがわかせんじき)の姿が 様変わりしていた。
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