第1章:ホワイトアウト

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「うわっ!どうしよう… 小屋から出られないよ」 慌てふためく俺とは真逆で シンジさんは落ち着いていた。 「すぐに小屋から出るよ。 リュックに着替えと寝袋を必ず入れて 手袋とニット帽はあるね? あと長靴は私が買ってあげたのを履いて それから…」 俺は荷物をまとめながら 手短にシンジさんの話を聞いた。 「ズボンは長靴の中に入れて下さい。 雪が靴の中に入ると急激に体温が下がります。 はぐれないように私について来て下さい。」 「でもシンジさん…小屋を出てこの吹雪の中 何処へ行くんですか?」 不安な俺にシンジさんが一言"大丈夫です"と 告げると俺はシンジさんに無理矢理 手をひっぱられる形で小屋の外に出た。 猛吹雪が容赦(ようしゃ)なく無数の粉雪を 顔に叩きつける。 シンジさんが雪を()き分けながら 先頭に立ち向かった先は近くの公園だった。 「やっぱり駅の方が良かったんじゃ…」 「いや。こっちで良いんです」 駅方面に向かおうと俺は言ったのだが たどり着く前に凍死するとシンジさんに 言われ公園に連れてこられた。 シンジさんは公園隅にある 鉄製のドアの前まで来ると 懐中電灯で手元を照らしながら ヘアピンと針金を取り出して器用に ドアの鍵を開けた。
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