雪彦と愛香(禁断じゃない従叔父姪の話)

3/3
前へ
/21ページ
次へ
【お腹が痛い日】   (※新作……っていうか前のページの続き) 「……ゆきにい……」 「どした?」  自分の声で、目が覚めた。  眠りと目覚めの狭間で自分が唇に乗せた名前。その名前の主の声が一拍遅れて耳に届いて、おでこにひんやりした手が乗った。 「……夢みてた」 「うん。ゆきにい、だもんな」  目を開けたら、夢よりだいぶ大人になったゆきが居た。手に持っていた本を閉じて、ずれた毛布を直してくれる。  お出かけすることになっていたのに、朝起きたら生理痛でお腹痛くて。頑張って待ち合わせ場所まで行ったんだけど、顔色悪いのに出掛けちゃだめって怒られて、タクシーで一緒に逆戻りさせられた。それで、薬飲んで……ソファで寝ちゃったんだ。 「ごめんなさい」 「なんで?」 「お出掛け、楽しみにしてたのに」 「全然。まなが良い様に過ごすのが一番」  小さい頃みたいに、頭を撫でられる。 「……ありがと」  見ていた夢には、現実の続きが有った。  あのあと、「お腹治ったなら午後はお出かけしちゃおうか?」って、ゆきとに出掛けることにした……んだけど。 「君、学生?このお嬢さんは誰?どこ行くの?」  ……みたいな感じで、ゆきが駅前でお巡りさんに呼び止められた。私がお巡りさんに親戚のお兄さんです!って泣いて怒って、最後にはごめんねって謝られたけど、泣いてる私とお出かけしたらまた呼び止められるからって、結局お出かけは取りやめたんだ。 「……雨降ってる?」 「みたいだね」  外から、ざあざあと音がする。  ゆきにもお腹にも悪いけど、痛くなってくれてありがとうって思っちゃいそうなお天気だ。 「お昼ご飯、食べられそう?隣のコンビニ行って買ってくる」 「……デザートもお願いしてもいい?」  もちろん!って言ったゆきの笑顔は、あの日のゆきにいと、変わらない。  ……大好き。  出掛けていくゆきを見送った私は、ずっとひとりの人を好きで居続けられている幸せを、毛布にくるまりながらひっそりとかみしめた。           【終】
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46人が本棚に入れています
本棚に追加