行き場のないおまけ・「余計なお世話か。」

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「いえ。私が出来ない間は、別の人に頼みます」  千都ちゃんは、きっぱり言った。 「先生に余計な事をさせないのが、私の仕事です。だから、これで大丈夫って言って頂いて、ほっとしました。土台が出来たら、頼みやすいから」 「確かに。その方が、安心……っていうか、安全だ」  千都ちゃんの半ば独り言の様な呟きに相槌を打ちながら、お茶を淹れる。紅茶や緑茶じゃなくて、ハーブティーのティーバッグだ。千都ちゃんが来たとき用にと、許嫁から渡されていた物だ。お茶にもカフェインが入ってるんですから妊婦さんには控えた方が、と言った顔が思っていたよりも大人びていて、驚かされたっけ。出来た許嫁だ。 「壮介は、幸せ者だね」 「そう……でしょうか」  どうぞ、カップを置くと、ありがとうございます、とはにかんだ。  そういう星の元に生まれたんだか人徳なんだか分からないが、壮介の周りには、つい奴の面倒を見てしまう人間ばかりが集まって来る。  前の奥方も女傑だったが、今の伴侶の千都ちゃんだってしっかり者だ。その上、壮介の理解者で、相思相愛の相手でもある。お互いに、何の文句も無いだろう。  ……と思ってふと目を上げると、千都ちゃんの表情は、なぜか少し不安そうに曇っていた。
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