行き場のないおまけ・「余計なお世話か。」

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「いらっしゃい」 「あ、せんせ」 「ちぃ。」  挨拶も無く入って来た壮介が、千都ちゃんを睨んだ。そう言えば千都ちゃんの呼び方も、いつの間にか周りに赤面を誘う感じに激変してたんだよね……怖くて誰も突っ込めないけど。  睨まれた千都ちゃんの方はと言えば、すごく嬉しそうだ。その反応、おかしくない? 「……はい、壮介さんっ。」  ほわわんと柔らかく笑う千都ちゃんの頭を、壮介が撫でかけて止まった。誰も居なけりゃ撫でるどころかもっと何かしてんじゃないの。  なに、この茶番。  さっきの千都ちゃんの相談は、もしかして相談の振りをした惚気だったのだろうか。 「遅くなって悪かった。体、大丈夫か?」 「ん。大丈夫」  膝に乗っけそうな甘さを撒き散らしながら、千都ちゃんの隣に座る。 「で、打ち合わせは」 「とっくに終わりましたよ、牧先生。お前の奥さんは優秀だね」 「おくさんっ……」  壮介をからかったのに、千都ちゃんが赤くなった。 「当たり前だろ。うちの女房は俺よりずっとちゃんとしてるぞ」 「……女房っ……」  何でれでれ見つめ合ってるの。人んちでべたべたするのは止めて欲しい。俺、まだ独身だし。  ここはひとつ、べたべたに水をぶっかける様な事を教えてやろう。 「ほんと、頼りになるよねー。打ち合わせが早く終わり過ぎたから、千都ちゃんの悩みまで聞いちゃったよ」 「悩み?」 「誰かさんが焦って結婚迫ったから、恋人期間が短くて残念、って。」  予想通り、引っ掛かった。簡単過ぎて面白みが無い位だ。
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