第1章 出会い

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 また、家臣団の中から、信用のおけるしっかりした者を選び、子供の教育係──傅役として側に付けるのも、ごく当たり前のことだった。  顔をあげた乱丸は、正面に座している若者を、まじまじと見つめた。  かつてこれほどまでに美しい人間を見たことがなかった。  品よくまとまったくちびるは紅をさしているかのように赤く、口を開くと白い八重歯がチラリと顔をのぞかせる。  黒目がちの目は長いまつ毛にふちどられ、まばたきをするたびにパサパサと音がしそうなほどだ。  いたずら好きな神が気まぐれに「たまには全力を出して、完璧に美しい人間を作ってみました」とでも言わんばかりの傑作で、目鼻やくちびる、輪郭の形、その配置も緻密で非の打ちどころがない。  麗しいのは姿形のみではなく、ひとつひとつの所作も洗練され、信長公の小姓頭にふさわしい凛とした威厳をまとっている。  まるで後光でもさしているかのように、仙千代のまわりだけ空気の色さえ違って見えた。 「本日は、わが(あるじ)よりのお使いでまいりました。さっそくですが──」  仙千代は書状を取りだすと、するすると慣れた手つきでひろげた。  それは、『天下布武』の御朱印が押された、信長公からの文だった。 「乱丸どのの初出仕(はつしゅっし)が明日に決まりました。上さま御自ら御会見なされます」
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