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仙千代は書状を乱丸に差し出し、乱丸は両手でうやうやしく受け取った。
「明朝、ご登城くださいませ。僭越ながら、この仙千代がお取り次ぎをさせていただきます」
「はっ、よろしゅうお願い申し上げます」
乱丸は再度、頭を下げた。
万見仙千代はほほえみながらひとつうなずき、さっと立ち上がった。
乱丸、六佐、はつの三人は仙千代を見送るため、玄関の外に出た。
「では、失礼いたします」
仙千代は一礼すると、供回りの者を連れて歩み去っていった。
「さすがは信長公のお小姓さま、あんなにも見目麗しい方が、この世におられるとは……」
客人の後ろ姿を見送りながら、はつはほれぼれとした表情を隠そうともしなかった。
「お綺麗だが、齢に似合わぬ凄みのある御仁でありますな」
六佐はうっそりと呟いた。
「乱丸さまもいずれはあのように御立派な若人になられるのでしょうねぇ」
はつが乱丸に目をやると、若い主はいまだに夢から覚めやらぬかの面持ちで、遠ざかる背中を見つめていた。
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