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修善寺紙は綺麗な薄紅色の和紙で、平元結は、現代風にいうと蝶ネクタイの羽を長くしたような形の、身分の高い女性や小姓がつける髪飾りだ。
前を歩く仙千代の首は長く、白い素肌と頭皮の間にあるうなじは、まるでそこが性的な部分であるかのように、ほのかな色香を放って見えた。
そう意識すると、乱丸はなぜだか見てはいけないものを見てしまった気がして、気恥ずかしさに胸が疼き、慌てて目線をそらした。
長い廊下を何度か曲がり、広い座敷に案内された。
「しばらくお待ちくださいませ」
乱丸は仙千代に促されるままに座敷の真ん中に正座し、その斜め後ろに六佐が座した。
座敷には、仙千代のほかに、二人の青年がいた。
「それがしは、長谷川 竹でござる」
「小姓の高橋 虎松と申します」
二人は名乗ると一礼した。
「森乱丸と申します。よろしゅうお願い申し上げます」
乱丸も礼儀正しくお辞儀をした。
「お竹どのはお馬廻りで、近習衆の代表格の一人です。虎松どのは小姓衆の最年長で、経験も一番長い。実質的な筆頭役です」
仙千代は説明した。
近習とは、信長の側近として勤める小姓衆や若手の馬廻衆のことで、いわば幹部候補生のような存在だ。
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