第1章 出会い

7/17
前へ
/348ページ
次へ
 修善寺紙は綺麗な薄紅色の和紙で、平元結は、現代風にいうと蝶ネクタイの羽を長くしたような形の、身分の高い女性や小姓がつける髪飾りだ。  前を歩く仙千代の首は長く、白い素肌と頭皮の間にあるうなじは、まるでそこが性的な部分であるかのように、ほのかな色香を放って見えた。  そう意識すると、乱丸はなぜだか見てはいけないものを見てしまった気がして、気恥ずかしさに胸が疼き、慌てて目線をそらした。  長い廊下を何度か曲がり、広い座敷に案内された。 「しばらくお待ちくださいませ」  乱丸は仙千代に促されるままに座敷の真ん中に正座し、その斜め後ろに六佐が座した。  座敷には、仙千代のほかに、二人の青年がいた。 「それがしは、長谷川(はせがわ) (たけ)でござる」 「小姓の高橋(たかはし) 虎松(とらまつ)と申します」  二人は名乗ると一礼した。 「森乱丸と申します。よろしゅうお願い申し上げます」  乱丸も礼儀正しくお辞儀をした。 「お竹どのはお馬廻りで、近習衆の代表格の一人です。虎松どのは小姓衆の最年長で、経験も一番長い。実質的な筆頭役です」  仙千代は説明した。  近習とは、信長の側近として勤める小姓衆や若手の馬廻衆のことで、いわば幹部候補生のような存在だ。
/348ページ

最初のコメントを投稿しよう!

163人が本棚に入れています
本棚に追加