第1章 出会い

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「いやいや、それがしはただ長く勤めているだけのこと」  にこにこと謙遜する高橋虎松は、体つきは大柄で凛々しい顔立ちをしているが、人柄は温厚そうに見えた。  一方、長谷川竹は、仙千代に負けず劣らずの眉目秀麗な若者だが、愛想笑いのひとつも浮かべるでもなく、とっつきにくい印象を受けた。 「上さまがお見えになられます」  先触れの小姓が告げた。  ほどなくして、上段の間に信長が颯爽と登場し、乱丸たちは深々と頭を垂れた。 「おもてを上げよ」  乱丸は頭を上げた。  七年ぶりに見る信長の顔は、記憶にあるよりも精悍で、以前にはなかった顎鬚をたくわえているが、全身からみなぎるような若々しさは変わっていなかった。 「ほう、大きくなったな、乱。安土には慣れたか?」  乱丸はこの地に来て数日しか経っておらず、まだ右も左もわからなかったが、この場の空気を読んで、 「はっ」と答えた。 「わからぬことがあれば仙千代や虎松に聞けばよい。逸らず勤めよ」  それだけ言うと、信長は来たときと同じように足早に去って行った。 「終わりました」
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