01.何か名前を付けるならば

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01.何か名前を付けるならば

 夏休みの過ごし方が肝心だ、と何度も聞いた言葉を再度繰り返す先生から視線を逸らし、私は手元にある夏期講習会の参加届のプリントを眺めていた。  周りを見ると既に参加届に名前を書いている生徒が大半ではあるが、参加する気のない数人はプリントを鞄の中に入れて帰ろうとしている。  私は少し悩みながらも、名前を書いて提出し、教室を出た。  日に日にピリピリしていく教室の空気は美味しくない。受験生と呼ばれる学年になってから、教室を出るのが早くなったように思う。明日から夏休みだというのに、受験生は夏休み返上で勉強をするんだろうなと他人事のように思った。  私も受験勉強をしてはいる。しかし、特に大学に入りたいと思っているわけではない。周りの人々を見て、進学するものなんだろうと思っているだけで。志望校というものもないため、担任の先生から進められた大学を志望校ということにしている。偏差値は取り立てて高くも低くもなく、平均的。人並みに何かをこなすことは、それなりに得意としてきたつもりだ。  夏らしい気温。冷気を求めて寄ったコンビニで、アイスを選ぶ。新発売、と書いてあるアイスを手に取ってレジへと向かった。こんな風に全て決められればいいのになあ、なんて、無気力な私らしい考えが頭を過った。
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