00.この題名の無い物語に

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00.この題名の無い物語に

 何者かにならなければ生きている意味などない。  いつからかは定かではないけれど、何となくそんな思いが自分の中にあった。  何者でもない自分に生きている意味はない。だから、今の自分に生きている意味はないのだ、と。  でも、だからといって死のうと思ったことはなかった。生きている意味がなくても生きていくことはできる。わざわざ自ら能動的に動いてまで自分の生を否定する理由もない。  ただ、それはまるで読み応えの無い物語を延々と読まされているような、そんな感覚だった。  退屈で、つまらない。それでも読み進めていかなければならない。  しかし、その物語に抗う気もなかった。  だから思っていたのだ。この、誰も読みたがらない、タイトルの無い物語に、誰かが勝手にタイトルを付けてくれれば、なんて。
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