歌声の正体(4月6日)

2/4
24人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
 もちろん、カンタンたちは慌てた。  骸骨たちの傍でくしゃみでもすれば、一斉に起き上がって襲われるだろう。その茶髪の戦士は必死な形相で口を押えた。  どうやら、彼はギリギリのところでくしゃみを堪えたみたい。確か、くしゃみって我慢すると鼻のあたりがズキリと痛むんだよね。まあ、スケルトンに襲われるよりはマシだけど…  無事に骸骨の前を通り抜けたところで、カンタンは困り顔になって言った。 「ヒヤヒヤさせないでくれよ」 「すんません」 「まあいい、先を急ごう」  その藪の先は、ごつごつした岩が幾重にも重なる見通しの悪い場所になっていた。少し歩みを進めると、先頭を歩いていた角を生やした獣人は「んん…!?」と声を上げた。 「どうした?」  カンタンが尋ねると、獣人は岩の先を指さした。 「あそこに、誰かいます」  カンタンも物陰からそっと様子を伺った。 「確かに、人が立っているな…あれはエルフか?」 「恐らく」 「身を隠しているように見えませんか」  私もそっと物陰から身を乗り出すと、確かに金色の髪をたなびかせる、とんがり耳の女性が見えた。  彼女は古めかしい甲冑に身を包み、どこか戦乙女を思わせる。  その戦乙女は、どこかおびえた様子で辺りを見回し、やがて岩場に背中を預けた。  風に乗って、声が聞こえてくる。
/82ページ

最初のコメントを投稿しよう!