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目を開けたとき、足元には、わらや木の枝のようなものが敷き詰められていた。
どこかで見覚えがある。そうだ、これは鳥の巣に似ている。違いがあるとすれば、目の前の巣は、あまりに大きいということくらいだろう。
それだけでなく、ひな鳥の甲高い鳴き声も聞こえてくる。ゆっくりと視線を下ろすと、鳥の頭にライオンのような胴体を持つひな鳥たちが、じゃれ合ったまま、私を物珍し気に眺めている。
これ、もしかして、ゲームや昔話に出てくるグリフォンという魔獣?
こうして身近で見るととても愛くるしい…なんて言っていられない。これ、親鳥が来るじゃない!
その直後に、何かが木の枝を踏みしめる音が聞こえてきた。
そっと背後を振り向くと、私と同じくらいの背丈の親グリフォンが立っている。その威圧感は、小さいころに見た動物園の熊を遥かに凌駕した。
私は硬く目をつぶり、とっさに何かを叫んだ。
ぐっと握った手から、じわりと汗がにじみ出た。寒くもないのに体中が震えている。そうか、これが恐怖と冷や汗なんだ。
そろそろ、さっきの親鳥が怒りに任せて襲ってくる。襲ってくる。襲って…あれ? それにしてはずいぶん静かだ。
ふわりと風が頬を撫でたとき、私はやっと目を開くことができた。周囲は既に真っ暗な闇に包まれている。
恐怖のあまり、おかしくなってしまったのだろうか。
いる場所はさっきと変わっていないみたいだけれど、辺りを見回すと、先ほどの親グリフォンが、子供たちと一緒に寝息を立てている。何がどうなっているのかはわからないけれど、これはチャンスだよね。
私は息を呑むと、そっと1歩を踏み出した。
ここは鳥の巣。敷き詰められた木の枝を踏み鳴らさないように気を付けないといけない。2歩目、3歩目と踏み出すと。ポキリと音を立ててしまった。
私はハッとして親鳥を見た。
月明かりの下で、親鳥は嘴を動かした。もしかして、気づかれてしまっただろうか。しばらく親鳥を眺めていたけれど、目はつぶったままだ。私の隙を伺っているわけじゃないよね。多分…
私は額の汗を拭うと、再び足をそっと動かした。親鳥は動かない。私は焦る気持ちを抑えてなるべく慎重に、大きな鳥の巣から立ち去った。
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