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歌声の正体(4月6日)
私たちは川原を進んでいた。川の周りにはいろいろな動物が集まるというけれど、彼らは襲われない自信があるのだろうか。
「待って」
魔導士の女性は立ち止ると、そっと木の幹に触れた。
植物と会話でもしているのかな。隣に立とうとしたらカンタンが手で静止してきた。
「今の彼女には近づかないほうがいい」
『え…?』
その直後に、魔導士の女性の近くに蜂が近づいてきた。ミツバチくらいの大きさだけど、どこか危なそうに見える。
複数の蜂が彼女の周りを飛び交うと、魔導士の女性は目を細め、やがてカンタンを見た。
「向こうの方角にクマ、あっちにイノシシ、そして…大体100メートルくらい先の茂みにはスケルトンが数体いるみたい」
カンタンは腕を組み、少しすると言った。
「このまま、まっすぐ進むのが安全そうだな」
今の、もしかして蜂に周りの様子を聞いていたのかな?
カンタン隊は川原を進み、問題の茂みの傍まで近づいた。その中に目をやると白骨化した動物がいくつも散らばっていた。
そうか。RPGで骸骨戦士と言えば人間の骨のイラストが多いけれど、人間以外のものが材料になることもあるよね。
カンタンは厳しい口調で言った。
「いいか。決して物音を立てるなよ。奴らは音や衝撃に反応する」
私たちは、ゆっくり慎重に川原を進んだ。大小さまざまな石が転がっているから、少し足の運び方を間違えると、物音を響かせてしまう。
カンタン隊の人たちは、私ではなく角を生やした獣人を見ていた。確かにこの中で一番重そうなのは彼だ。彼はわかっていると言わんばかりに頷くと、仲間たちと共に慎重に歩き始めた。
一同が物音を立てずに進むなか、川のせせらぎだけが静かに音を立てている。私が骸骨の目前と通り過ぎようとした時、隣にいた茶髪の男性が急に目を細めた。そして、手が伸びる。
え? もしかして、くしゃみ?
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