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997年4月5日
そっと目を開けると、辺りは朝もやに包まれていた。
4月とはいえ、早朝の寒さはなかなか厳しいものだった。グリフォンが寄り添ってくれなければ凍えていたかもしれない。
音を立てないように端末を手に取ると、時刻は6時を少し過ぎている。
横目でグリフォンを見ると、彼はまだ眠っていた。呼吸に合わせて体が動いているのがなんともおもしろい。
あ、そういえばこのグリフォン、私のことをひな鳥だと思っているかもしれない。人間であることがわかってしまったら、襲われてしまうだろうか。
もしそうなら、今のうちにターンエンドと叫んで6日に逃げるべきだろうか。確かに、グリフォンからは逃げられるけど、また深夜帯に逆戻りしてしまう。
私には身を守る武器も、辺りを照らす松明もない。闇雲に深夜の森の中を歩いても、昨夜のように骸骨か何かに襲われるのがオチだろう。
それならどこかに隠れてやり過ごせば…いや、それでも隠れ家になる場所を探さなければいけないし、隠れていても肉食獣に嗅ぎつけられるのが関の山かな。
おや、グリフォンが起きた。
「…オキタカ」
『お、おはよう…昨日はありがとう』
グリフォンはじっと私を眺めていた。
彼は目を細めた。
「オマエ、ナニモノ?」
どうしよう。鳥と答えるべきかな。でも、こう聞いてきたのは仲間には見えなかったからだよね。
彼には助けてもらったし、ここは正直に答えるべきか。
『人間だよ』
「ニンゲン…?」
グリフォンはゆっくりと立つと、じっと私を眺めた。
もしかしたら、翼があることが気になっているのかな。でも、この体のことを聞かれても困るな。私だって有翼人のことはよくわからないし。
困り顔のままグリフォンを眺めていたら、彼はゆっくりと言葉を口にした。
「ニンゲン、ウソツク、ハズ」
『人間だって嘘をつかないことも多いんだよ』
グリフォンは少し表情を変えた。その雰囲気は悩んでいるようにも見える。
「オマエ、ナマエハ?」
『ミサ』
「みさ…」
『貴方は?』
「うらがん、ヨバレテイル」
『ウラガン…』
「コイ」
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