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プロローグ
…この世には、たくさんの悪い人たちがいる。
泥棒、誘拐者、殺人者等々。
中でもよくニュースや新聞で目にするのは、『詐欺師』だ。
詐欺師は恐ろしい、様々な手を使って人を騙し、金や物を手に入れようとするから。
よく、噓つきは泥棒の始まりというが、まさにその通りだと私は思う。
なぜなら、詐欺師は嘘をついて人を騙し、物を盗んでいくからだ。
…私は、それが許せない。
私の名前は宇野 正(ウノ セイ)
物事を正してくれるような子に育ってほしいと願って付けられた名前だそうだ。
両親の願い通り、私は物事を正す…政治の世界へ入った。
『噓つきは犯罪だ。』
私はその言葉をモットーに働いている。
生物王国という、様々な生き物たちが暮らす世界。
そこに建てられている一つの建物。
その建物こそ、私が勤める場所。
【嘘吐き裁判所】
此処では、様々な嘘吐き容疑にかけられた者たちが法によって裁かれる。
私はそこで弁護人として活動している『人間』だ。
生物王国という名前の通り、この世界には様々な動物たちが暮らしている。
何故か全員立って歩いたり、人の言葉を話したり、不思議な世界だが、人間は私のほかに誰もおらず、最早私の方が不思議な目で見られるレベルだ。
最初の頃はそれに慣れず、不安だった。
しかし今となってはその視線にすら慣れてしまった。
やはり裁判所という場所で働いているからなのか、周りの人物からの視線に対して恐怖や抵抗がなくなった。
不思議なものだが慣れないよりかはずっといいと思えた。
今日も私は裁判所の控室で被告…つまり今回の容疑をかけられた動物を待っていた。
すると、
コンコン…
という扉のノックと共に扉が開く。
そして私の目の前に現れたのは
「初めまして。本日は弁護をよろしくお願いします。」
真っ白な毛並みで、すらりとした兎だった。
『えぇ、宜しく。…宇佐美さんだったかしら。』
私はソファーから立ち上がり、ニコリとしながら話しかける。
「はい、宇佐美モモです。」
彼女は、宇佐美モモ。今日私が弁護を担当することになった子だ。
…ちなみに、この世界でも、私たちの世界と同じように苗字と名前がある。
彼女は、生物大学の学生だと言っていた。
今回嘘吐き容疑をかけられた原因は、その大学での出来事にあるという。
詳しい話は、法廷の場で話すといわれたので追及はしなかったが、どうも気になる。
「そろそろ開廷の時間です。入廷をお願いします。」
柴犬警官が控室の扉を開けてからそう言ってくる。
『分かったわ。すぐに行く。』
私は柴犬警官にそう呼び掛けると、
『宇佐美さん、行きましょうか。…法廷へ。』
宇佐美さんに向き直りそう言った。
「はい。…あの、私、嘘吐きなんかじゃないですから。」
宇佐美さんは、不安そうな顔をしながらもそう言ってくる。
『…それは、法廷で明らかになるわ』
私はそう言うと、控室を出た。
私は弁護人で、被告を守らなければいけない存在だ。
…しかし、私は嘘吐きが大嫌いだ。
だからもし、被告が嘘吐きだったらと考えると、いまいち信じきれない。
なので私は、信じるか信じないか、法廷の場で決めることにしている。
…さぁ、今回の被告はどちらだろう。
今、法廷の扉が開き、嘘の有無が問われる…!
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