657人が本棚に入れています
本棚に追加
さらに、は?
(蓮ちゃん? 俺が部長のことをそう呼ぶのか?)
田中は頭の中の整理に忙しい。
「蓮ちゃん、分かったから! そう仏頂面すんなって。どこの店にOpen挨拶でそんな顔するマスターがいるんだよ」
坂崎の言葉で救われた。
「蓮ちゃん…… 畏れ多い……」
「木内。そう呼べないなら帰れ、来なくていい。みんなに言っておく。『蓮ちゃん』あるいは『マスター』以外の呼びかけには応じない。口にしたら1回300円の罰金だ。この店のルールだ」
「あ、冗談だからね! 蓮ちゃん、それダメ! 相手はお客さんなんだよ、だいたい偉そうだよ、俺が一番偉いって言ったでしょ?」
「ふん、なんでお前が上なんだ?」
「だって店長だもん」
「俺はマスターだ。料理長でもある。お前、俺に給料払えんのか?」
「……汚い! そんなこと言う? みんな、偉いのは俺の方だからね! 気を遣うんなら蓮ちゃんじゃなくって俺にしてよ!」
(無理だ、ジェイ。あの目を見ろよ、あの威圧感……)
哲平始め、みんなどこで笑っていいのか判断に苦しんでいる。
「今日は寛いでってくれ。月曜からは通常営業にする。今日は後から偉そうなのが何人か来るが、この店では入り口を入ったら無礼講だ。間違っても立ち上がって挨拶なんぞするな。いいな?」
「はい!」
習性とは恐ろしい。揃った返事に、蓮は腕組みしたまま頷いた。
カウンターに入って行く『河野さん』の姿に違和感有り有りで、なんとなくみんなもやり辛くって、壁のメニュー表に目をやった。花の声。
「は?」
最初のコメントを投稿しよう!